【スペシャル対談】本物を知れば、スポーツはもっと楽しくなる。歯科技工士とスポーツ歯科医学の研究者が語る、マウスガードの機能と未来
スポーツをする時、マウスガードを着けていますか?
「着けた方がいいのは分かるけど、息苦しいし……」「プロじゃないから、そこまでは……」そう感じている方は多いかもしれません。
しかし、もしマウスガードが「ただ歯を守る道具」ではなく、「自分の力を引き出してくれる相棒」だとしたらどうでしょうか。
今回は、そんな「本物のマウスガード」を生み出した二人のスペシャリストにお話を伺いました。一人は、トップアスリートから指名され続ける歯科技工士・工藤裕明さん。もう一人は、スポーツ歯科医学の専門家として研究を続ける芳賀秀郷先生。
「なぜ、市販品ではダメなのか?」「マウスガードを着けると、なぜ力が発揮できるのか?」そして、日本のスポーツ歯科が向かう未来とは。
専門的なお話ですが、スポーツを愛するすべての人に知ってほしい「大切なこと」が詰まっています。ぜひ、最後までお付き合いください。

対談者プロフィール
工藤裕明(Hiroaki Kudo)
Shy Dental Lab代表 / VIA製作者
JASD(日本スポーツ歯科医学会)認定マウスガードテクニカルインストラクター
「機能的なものは美しい」という信念を持つ歯科技工士。既存のマウスガードの課題(分厚い、喋りにくい)を解消するため、独自の製作技術を確立。VIAの全ての製作を監修し、その品質を担保している。
芳賀秀郷先生(Dr.Shugo Haga)
歯学博士 / 昭和大学歯学部歯科矯正学講座准教授
UCLA Visiting Assistant Project Scientist
歯科矯正とスポーツ歯科のスペシャリスト。米国UCLAへの留学経験を持ち、日米の事情に精通。「選手が使わなければ意味がない」という現場目線を持ち、VIAの医学的アドバイザーを務める。
聞き手:VIAスタッフ(成田デンタル)
目次
「機能美」:一目でわかるレベルの違い
VIAスタッフ(以下、VIA):本日はお忙しい中、お集まりいただきありがとうございます。芳賀先生はLAからご帰国されたばかりのタイミングで、工藤さんには北海道からわざわざお越しいただき、改めて感謝申し上げます。
今回は、製作者としての「技術の視点」と、医学博士としての「科学の視点」から、VIAについてじっくりお話を伺っていければと思います。
早速ですが、まず芳賀先生から見て、工藤さんが作る「VIA」は他の製品と何が決定的に違うのでしょうか?
芳賀先生(以下、芳賀):単純に、まず「見た目」が違いますね。工藤さんの仕事はとにかく綺麗なんです。例えば、舌が当たる内側の面のカットライン一つとっても、普通の技工士さんが真似しようとしても絶対にああいう風にはなりません。一つひとつの工程が圧倒的に丁寧であるということが、パッと見た瞬間に伝わってきます。

VIA:その丁寧さは、どこから来るのでしょうか?
工藤さん(以下、工藤):難しい質問ですね(笑)。こんなことを言っていいのかわかりませんが、僕にとっては「それが普通」なんです。これが当たり前のレベルだと思って作っています。ただ、「パッと見て美しいもの」は絶対にお客様にとって必要だと考えています。
芳賀:その「普通」の基準が、世の中のレベルと大きく乖離しているんですよ。僕も仕事柄、いろんなラボ(技工所)や、歯医者を通さずに作るマウスガード業者などの製品を見ますが、正直に言って工藤さん以外のものを見て「上手だな」と思ったことは一度もありません。工藤さんの作品には、直感的に「あ、この人うまいな」と感じさせるオーラがあります。
なぜ「オーダーメイド」でないといけないのか
VIA:そもそも、スポーツ店などで売っている「お湯で温めて作るタイプ(市販品)」と、歯科医院で作る「オーダーメイド」は、何がどう違うのでしょうか?
芳賀:簡単に言うと、靴のサイズ選びと同じです。市販品が「S・M・L」の3サイズ展開だとしたら、オーダーメイドは足の形を採寸して作る専用シューズです。サイズが合わないブカブカの靴で、全速力で走れますか?という話なんです。

工藤:そうですね。合わない靴で走れないのと同じで、合わないマウスガードだと、口を開けた時に落ちてきてしまったりします。VIAのようなオーダーメイドを使ったことがある人なら、その違いは一瞬でわかると思います。
VIAのこだわり:「2層構造」と「加圧成形」
VIA:VIAの構造的な特徴について教えてください。
工藤:最大の特徴は、シートを2枚重ねる「ラミネート(2層構造)」であることです。一般的なマウスガードは、分厚いシートを1枚プレスして終わり、というものが多いんです。でも、それだと構造上どうしても「前歯の部分が薄くなり、奥歯の部分が無駄に分厚くなる」という現象が起きてしまいます。
VIA:一番守りたい前歯が薄くなってしまうんですね。
工藤:はい。だからVIAではラミネート加工を標準にしています。前歯は厚く、奥歯は薄く仕上げることができるので、保護力と快適性を両立できます。これを作るために、一般的な「吸引式」ではなく、「加圧成形機(エルコプレス)」という特別な機械を使っています。
VIA:なぜ、手間のかかる「2層構造」に行き着いたのですか?
工藤:実は、ルーツは「デザイン」なんです。僕は元々、スノーボードやスケートボードなどの仲間が多くて、彼らにマウスガードを提供していました。彼らは「自分の好きなグラフィックを入れたい」と言うんです。デザインを綺麗に入れるにはシートの間に挟み込む必要があるので、自然と2層構造になります。

VIA:デザインへのこだわりが、機能の発見に繋がったと。
工藤:そうなんです。最初は一番奥の歯まで全部2層にしてみたり、色々試しました。その中で、自分自身で使ってみて「奥歯まで2層だと分厚すぎて違和感がすごい」とか、「ここは薄くても大丈夫だ」というのを削ぎ落としていって、今のVIAの形状に辿り着きました。
「噛みしめ」とパフォーマンスの関係
VIA:工藤さんは以前、スポーツ選手以外にもマウスガードを提供していたことがあるそうですね?
工藤:はい。実は以前、引越し屋さんや大工さんに、2mmくらいの薄いマウスガードを提供していたことがあります。彼らは重いものを持つ時、無意識に歯を食いしばりますよね。薄いマウスガードを入れてあげると、「力が入る」「仕事が楽になる」とすごく喜ばれました。
VIA:スポーツだけでなく、日常の「力仕事」でも効果があるんですね。
工藤:そうなんです。厚みがなくても、噛みしめをサポートするだけでパフォーマンスは変わります。だからVIAも、最初から分厚いものを作るのではなく、まずは「違和感なく噛みしめられる」という点を重視しています。
「価値」が伝わらなければ、普及はしない
VIA:芳賀先生は、マウスガードを普及させたいという想いの一方で、だれかれ構わず配ることはしないとお聞きしました。
芳賀:もちろん、一人でも多くのアスリートに使ってほしいという想いは強くあります。ただ、普及させたいからといって、無償でばら撒けばいいというものではありません。例えば駅前で配っている無料のボールペンを、一生大切に使う人はいないですよね?(笑)それと同じで、価値が伝わっていない状態で渡しても、大切にされないし、使ってもらえないんです。

VIA:使ってもらわなければ、意味がないと。
芳賀:そうです。だから僕は、「本当に必要性を理解している人」「意識が高い選手」に提供するようにしています。トップ選手や意識の高い選手が「これは自分のパフォーマンスに必要だ」と感じて使い始めれば、それを見た周りの選手たちも「マウスガードって必要なんだ、カッコいいんだ」と気づいてくれます。結果として、それがマウスガード文化を正しく広める一番の近道になると考えています。
「怪我の記憶」がパフォーマンスを下げる
VIA:マウスガードを着ける意味について、改めて教えてください。
芳賀:僕は「コンディションを落とさないことが最高のパフォーマンス」だと思っています。試合前に風邪を引いたらダメなのと一緒で、怪我をしたら元も子もありません。
VIA:怪我の予防ですね。
芳賀:それだけではありません。もし歯が折れるような怪我をしてしまったら、治ったとしても「また折れるかもしれない」という恐怖心(フラッシュバック)が残ります。次に同じようなプレーをする時、無意識に足がすくんでしまう。それではパフォーマンスが出せません。マウスガードを着けていれば、怪我を防げるだけでなく、「守られている」という安心感から、恐怖心を持たずに思い切りプレーができます。これが一番の効果かもしれません。
初めての人へのアドバイス
VIA:これからマウスガードを作る初心者の方へ、アドバイスはありますか?
工藤:初めて作る方には、正直なところ「グラフィック(デザイン)入り」はあまりお勧めしません。グラフィックを入れると、その分どうしても厚みが増します。初めてマウスガードを入れる人にとって、その厚みは「違和感」になりやすいんです。

VIA:最初は我慢すべきでしょうか?
工藤:最初の体験で「うわ、邪魔だな」と思われて使われなくなってしまうのが一番もったいないですから。まずは透明や単色の「スタンダード」なVIAを使ってみて、違和感のない状態に慣れてほしい。そして次のステップとして、グラフィック入りに挑戦していただくのがベストです。
歯科医院の「新しい入り口」として
VIA:VIAを展開することで、歯科業界にはどんなメリットがあるとお考えですか?
工藤:今、虫歯は減っています。削る治療が減っていく中で、歯科医院も「予防」などの新しいアプローチが必要です。スポーツはほとんどの人が関わりますよね。「何のスポーツやってるんですか?」という会話から、「じゃあマウスガード作った方がいいですよ」と繋がれば、それが歯科医院に来る新しいきっかけになります。
芳賀:そうですね。マウスガードきっかけで来院して、検診を受けたり、ホワイトニングに興味を持ったり。「歯が痛いから行く場所」ではなく、「スポーツを楽しむために行く場所」になれば、歯科業界全体が明るくなると思います。
VIAは「驚異的」な成果を出している
VIA:現在、VIAは順調に広まっているのでしょうか?
工藤:はい。おかげさまで、正確な数は秘密なんですけど、とても多くのオーダーをいただいています。月によってはかなりの数を作ることもありますが、平均しても常に安定した数をお届けできていて、これまでになく確かな手応えを感じています。
VIA:それは、業界全体で見るとどのような状態なのでしょうか?
工藤:スポーツ歯科の世界を知らない人からすると「少ない」と思うかもしれませんが、これ、とんでもなく優秀な数字なんです。日本全体で見ても、スポーツマウスガードの製作数は(個人のラボを含めても)月間200個出ているかどうか、という世界です*。その中でVIA単体でこれだけの数が出ているというのは、すでに驚異的な成果だと言えます。*個人の見解です
VIA:シェアの多くをVIAが占めている可能性があると。
工藤:そうなんです。だから、成田デンタルの皆さんとしては「もっと広めたい、まだまだ足りない」と感じるかもしれませんが、この業界の感覚からすると、これ以上ないくらいのロケットスタートを切れています。この業界は文化を作るのに時間がかかります。焦っておかしなことをするのではなく、着実に階段を登っていけば、プラスにしかなりません。今のペースで、自信を持って進んでいけばいいと思っています。
メッセージ:すべてのスポーツ愛好家へ
VIA:最後に、読者の皆様へメッセージをお願いします。
工藤:マウスガードは「守るため」に入れるものだと思われがちですが、僕は「攻めるため」のギアだと思っています。自分の好きなものを身につけて、スイッチを入れる。そうすることでモチベーションが上がり、ガンガン攻めたプレーができる。アスリートの一瞬のパフォーマンスを支える、VIAがそういう存在になれれば嬉しいです。

芳賀:スポーツを長く楽しむために、怪我のリスクは最小限にすべきです。「たかが歯」と思うかもしれませんが、歯のトラブルは全身のバランスや食事、生活の質に直結します。トップアスリートだけでなく、スポーツを楽しむすべての方に、「安全」と「安心」を手に入れる選択肢として、マウスガードを使っていただきたいですね。
VIA:お二人とも、本日は貴重なお話をありがとうございました!
あなたも「本物」を体験しませんか?
マウスガード「VIA」。それは、単なる防具ではありません。恐怖心を消し去り、集中力を高め、あなたのスポーツライフをより豊かにするギアです。
「市販品で失敗したことがある」「子供に安全にスポーツをさせたい」「もっとパフォーマンスを上げたい」
そう思ったら、ぜひお近くの認定歯科医院で相談してみてください。自分専用に作られたVIAを装着した瞬間、きっと「これなら戦える」という確信が生まれるはずです。




