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スポーツマウスピースについて|効果・値段・選び方を専門家が全て解説します

#野球

「子どもが部活を始めたけど、どんなマウスピースを選べばいいの?」
「マウスピースで本当にパフォーマンスは上がるの?」
「歯医者で作ると高いって聞くけど、市販品と何が違う?」

スポーツを楽しむすべての人にとって、安全の確保は最も重要な課題の一つです。特に、顔や口元への衝撃は、歯の破折や脱臼といった取り返しのつかない怪我につながる可能性があります。そのリスクを大幅に軽減してくれるのが「スポーツマウスピース」です。

しかし、一言でスポーツマウスピースと言っても、その種類や値段、期待できる効果はさまざま。誤った知識で選んでしまうと、十分な効果が得られないばかりか、かえってプレーの妨げになることさえあります。

この記事では、スポーツマウスピース開発の専門家チームが、長年の知見と科学的根拠に基づき、あなたの疑問にすべてお答えします。

  • マウスピースの基本
    保護効果からナイトガードとの違いまで
  • 科学的根拠
    パフォーマンス向上や脳震盪予防の真実
  • 最適な選び方
    市販品と歯科医院で作るカスタムメイド品の違い
  • 費用と製作プロセス
    値段の相場、保険適用、完成までの流れ

このコラムを読めば、あなたやあなたの大切な家族にとって、本当に価値のある一枚を見つけることができるはずです。最適なスポーツマウスピースを選び、心から安心してプレーに打ち込みましょう。

少年野球の試合で、打席に立ち集中した表情を見せるヘルメット姿の少年選手

目次

スポーツマウスピース(マウスガード)とは?基本と効果をプロが解説

スポーツマウスピースについて調べ始めると、「マウスガード」という言葉も目にするかもしれません。まずは、これらの基本的な定義から、なぜスポーツに不可欠なのか、そしてよくある誤解まで、専門家の視点からわかりやすく解説します。

私たちがVIA開発に踏み切った原点には、少年野球の練習中に起きた顔面打球事故があります。唇を切り、歯がぐらつく姿を目の当たりにし、「スポーツから歯の怪我をなくしたい」と強く決意しました。この2015年の出来事が、単なる防具ではない、アスリートの未来を守る「究極のギア」としてのVIA誕生に繋がっています。安全への想いが私たちのモノづくりの核です。

▼ VIAについて詳しく見る

https://via-smg.com/about-via/

「マウスピース」と「マウスガード」は同じもの?

マウスガードとマウスピース

「マウスピース」という言葉は、歯ぎしり防止用やホワイトニング用などの口腔内装置全般を指すこともあります。

ただし、スポーツ用途で使われる場合、「スポーツマウスピース」と「スポーツマウスガード」は基本的に同じものを指しますが、一般的には「マウスピース」という呼び名が広く浸透しています。

歯科医療やスポーツ医学の専門領域では、衝撃から口を守る防具(Guard)という意味合いから「マウスガード」と呼ぶのが一般的です。

そのため、この記事では、読者の皆様に馴染みのある「スポーツマウスピース」という言葉を使いつつ、専門的な文脈では「スポーツマウスガード」と併記して解説を進めます。

最大の目的は歯・口・顎を守る「外傷予防効果」

スポーツマウスピースを装着する最大の、そして最も科学的に効果が証明されている目的は、スポーツ中に起こりうる衝撃から歯や口、顎周辺を守る「外傷予防」です。

マウスピースは、弾力性のある素材がクッションの役割を果たし、外部からの衝撃を吸収・分散させます。これにより、歯の破折(折れること)、脱臼(抜けること)、口腔内軟組織の裂傷(切れ傷)、そして顎の骨折といった深刻な怪我のリスクを大幅に減らすことができます。

これらの効果は、日本歯科医師会をはじめとする多くの専門機関によって認められており、昭和大学や東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)などの専門機関でもスポーツ歯科外来を設けてその重要性を説いています。

【危険】ナイトガード(歯ぎしり用)のスポーツでの代用はNG

「普段、歯ぎしり用にナイトガードを使っているから、これをスポーツにも使えるのでは?」と考える方がいらっしゃいますが、これは非常に危険な誤解です。

ナイトガードと歯ブラシに赤いバツ印が重ねられた、スポーツ用途に不適切な例を示す画像

ナイトガードの中には、VIAのようなスポーツマウスガードと同じ柔らかい素材(ソフトタイプ)で作られているものもあります。しかし、たとえ素材が同じでも、その目的と設計思想が全く異なるため、スポーツでの使用は絶対に避けるべきです。

両者の本質的な違いは、想定している「力の種類」と「守るべき対象」にあります。

  • ナイトガードの目的
    睡眠中の「垂直方向の持続的な圧(歯ぎしり・食いしばり)」から、歯の咬合面(噛み合わせる面)がすり減るのを防ぐことが主目的です。
  • スポーツマウスガードの目的
    プレー中の「あらゆる方向からの突発的な衝撃」を吸収・分散させることが主目的です。保護対象は歯だけでなく、歯茎、唇、舌といった軟組織、さらには顎関節まで広範囲に及びます。

この設計思想の違いは、形状にも明確に現れます。VIAのようなスポーツマウスガードは、衝撃が及びやすい歯茎の部分まで広く深く覆うことで、口唇などの裂傷を防ぎます。一方、ナイトガードは歯列や咬み合わせの部分のみを覆うものが多く、軟組織の保護性能はほとんど期待できません。

さらに、VIAはプレー中の激しい呼吸やコミュニケーションを妨げないよう、緻密に厚みが調整されていますが、ナイトガードにそのような考慮はありません。代用した場合、運動時の呼吸困難やパフォーマンス低下を招くことにも繋がります。

素材の共通性だけで判断せず、それぞれの専門的な用途を守って正しく使い分けることが、安全確保の絶対条件です。

【この章のまとめ】

スポーツマウスピース(マウスガード)は、スポーツ外傷から歯や口を守るための重要な防具です。特に、歯ぎしり用のナイトガードとは目的も素材も全く異なるため、代用は絶対にできません。次の章では、しばしば期待されるパフォーマンス向上効果などの真偽について、科学的根拠をもとに詳しく見ていきましょう。

パフォーマンスは向上する?脳震盪は防げる?科学的根拠を解説

スポーツマウスピースには、怪我の予防だけでなく、「筋力が上がる」「パフォーマンスが向上する」といった効果が期待されることがあります。また、「脳震盪も防げる」という話を聞いたことがあるかもしれません。ここでは、これらの効果がどこまで科学的に証明されているのか、最新の研究や専門家の見解をもとに解説します。

医師が脳のMRI画像を指し示しながらタブレットで説明している様子

総合格闘家の屋 怜選手は「奥歯が薄いのにかなり丈夫で、息のしやすさは段違い。デザインも自由にカスタマイズできる」と評価。プロレスラーの勝俣 瞬馬選手からは「VIAは自分自身を守るための武器」との声も届いています。競技によって求める要件が異なるため、私たちは競技特性に合わせて設計と噛み合わせの最適化を行っています。

※上記は個人の感想であり、感じ方には個人差があります。

筋力・パフォーマンス向上効果に関する科学的な見解

スポーツマウスピースの装着がパフォーマンスに与える影響については、多くの研究が行われていますが、「誰にでも、どんなスポーツでも明確な効果がある」と断言できる段階には至っていません。効果は非常に限定的であり、個人差や競技特性によるところが大きいのが現状です。

複数の研究をまとめた報告(システマティックレビュー)では、特に個人の歯型に合わせて精密に作られたカスタムメイドマウスガードを装着した場合、運動能力が向上する傾向が見られると結論付けています 。これは、噛み合わせが安定することで、瞬間的に力を入れる際に体幹が安定し、効率よくパワーを発揮できるためと考えられます。

一方で、ある学術研究では、マウスガード装着によって体のバランス感覚がわずかに変化する可能性も示唆されており、バランス感覚がわずかに変化する可能性も示唆されており、精密なコントロールが求められる競技では、逆効果になる可能性もゼロではありません。

総じて、パフォーマンス向上は副次的な効果として期待できる可能性はありますが、それを主目的にするのではなく、あくまで外傷予防が第一の目的であると理解することが重要です。

脳震盪の予防・軽減効果の最新コンセンサス

スポーツにおける脳震盪(のうしんとう、頭部に衝撃を受けて生じる脳機能の一時的な障害)は非常に深刻な問題であり、マウスピースにその予防効果を期待する声は少なくありません。

しかし、2023年に発表されたスポーツにおける脳震盪に関する国際的な専門家の合意(コンセンサス声明)では、マウスガードが脳震盪そのものを防ぐという直接的な科学的根拠は、現時点では確立されていないと結論付けています。

もちろん、マウスガードが顎への衝撃を和らげることで、脳へ伝わる衝撃をある程度軽減する可能性は否定できません。しかし、脳震盪は頭部の回転加速度など複雑な要因で発生するため、マウスガードだけで完全に防ぐことは難しいのが実情です。

ただし、これはマウスガードが無意味だということではありません。歯や顎を守るという確立された効果は非常に重要であり、装着は強く推奨されます。脳震盪のリスク管理は、ヘルメットの着用や正しいプレーの習得など、総合的な対策の一部として考えるべきでしょう。この点について、大学病院などの専門外来では個別の相談も可能です。

効果を左右する鍵は「個々に最適化された適合性」

パフォーマンス向上や衝撃の緩和といった副次的な効果を最大限に引き出す上で、最も重要な要素は「マウスピースが個人の歯並びや噛み合わせに、いかに精密に適合しているか」という点です。

複数の研究を比較しても、ポジティブな効果が報告されているのは、そのほとんどが歯科医院で製作されたカスタムメイド品の場合です。体に合っていないマウスピースは、違和感で集中力を削いだり、不自然な噛み合わせで逆効果になったりする可能性があります。

つまり、スポーツマウスピースの効果を語る上で、その品質と適合性が大前提となるのです。次の章では、その品質を決定づけるマウスピースの種類について詳しく比較していきます。

【この章のまとめ】

スポーツマウスピースのパフォーマンス向上効果や脳震盪予防効果は、科学的に確立されていませんが、個々に適合したカスタムメイド品において限定的な効果が期待できる可能性はあります。最も重要なのは、次の章で解説する「自分に合った種類を選ぶこと」です。

【徹底比較】スポーツマウスピースの種類と最適な選び方

スポーツマウスピースは、どこでどのように作るかによって、大きく3つの種類に分けられます。それぞれの特徴を理解することが、あなたにとって最適な一枚を選ぶための第一歩です。ここでは、市販品から歯科医院で作るオーダーメイド品までを徹底比較し、なぜ専門家が特定のタイプを推奨するのかを解説します。

開発初期、私たちは市販の加熱タイプを数種類以上試しましたが、どうしてもフィット感に納得できませんでした。特に奥歯の適合が悪く、話すとすぐに浮き上がってしまう。「これではプレーに集中できない」と感じたのが、歯科医院での精密な型取りを前提とするVIAの設計思想の原点です。この経験が、違和感を極限まで減らすというVIAの現在の品質基準に繋がっています。

市販品①:すぐ使えるがズレやすい「既製(ストック)タイプ」

スポーツ用品店などで最も安価に手に入るのが、あらかじめ成形されている「既製(ストック)タイプ」です。S・M・Lのようなサイズ展開はありますが、個人の歯並びに合わせて調整することはできません。

  • メリット
    安価(1,000円前後〜)、購入後すぐに使える。
  • デメリット
    フィット感が極めて悪く、口を開けたり話したりするとすぐにズレる。保護性能が低く、異物感が強いためプレーへの集中を妨げやすい。

緊急用としては選択肢になり得ますが、継続的な使用には全くお勧めできません。

市販品②:自分で作るが性能に限界がある「加熱(ボイル&バイト)タイプ」

現在、市販品の主流となっているのが、お湯で温めて柔らかくし、自分で噛んで形を作る「加熱(ボイル&バイト)タイプ」です。既製タイプよりは個人の歯型に合わせることができます。

  • メリット
    比較的安価(2,000円〜5,000円程度)、手軽に作れる。
  • デメリット
    自分で成形するため、歯列にうまく適合できなかったり均一な厚みを保つのが難しく、フィット感や保護性能に限界がある。うまく作れずに薄い部分ができてしまったり、噛み合わせがズレてしまったりするリスクも伴います。

手軽さから多くの人に選ばれていますが、歯科専門家が作るものとは品質に大きな差があることを理解しておく必要があります。

歯科医院で作る「カスタムメイドタイプ」が最も推奨される理由

歯科医師や歯科技工士が、精密な歯型を基に専門技術で製作するのが「カスタムメイドタイプ」です。費用と時間はかかりますが、安全性と機能性において市販品を圧倒しており、すべての専門機関がこのタイプを強く推奨しています。

歯科技工士が歯型を基にスポーツマウスピースを研磨して仕上げている様子
スポーツマウスピース(マウスガード)比較
特徴既製(ストック)タイプ加熱(ボイル&バイト)タイプカスタムメイドタイプ
適合性低いまあまあ非常に高い
保護性能低い限定的高い
会話・呼吸のしやすさしにくいややしにくいしやすい
価格の目安安い(〜2,000円)手頃(2,000円〜)高価(15,000円〜)
専門家の推奨度非推奨非推奨強く推奨

圧倒的なフィット感と保護性能

カスタムメイドタイプのマウスガードは、歯科医院で採取する精密な歯型をもとに製作するため、歯列に吸い付くような完璧なフィット感が得られます。これにより、衝撃が加わった際にマウスピースがズレることなく、エネルギーを効率的に全体へ分散させ、歯や顎を最大限に保護することができます。

呼吸や会話を妨げず集中力を維持

不要な部分が削ぎ落とされ、最適な厚みで設計されるため、装着時の違和感が最小限に抑えられます。その結果、呼吸がしやすく、チームメイトとのコミュニケーションもスムーズに行えるため、プレーへの集中力を維持することができます。市販品でよくある「気持ち悪くなってしまう」といった問題もほとんどありません。

競技に合わせた最適な設計が可能

一般的なスポーツ用はEVA系素材をベースに、競技・ポジションに応じた厚み設計を行います。ラグビーのフォワードのように激しい接触が予想されるポジションには厚めに、一方で会話や呼吸のしやすさを重視する競技には薄めに、といったように、競技の特性や個人の要望に合わせて厚みや形状を細かく調整できるのもカスタムメイドならではの利点です。

【この章のまとめ】

スポーツマウスピースには市販の既製品、加熱成形品、そして歯科医院で作るカスタムメイド品の3種類があります。安全性、快適性、機能性のすべてにおいてカスタムメイド品が圧倒的に優れており、専門家は一貫してその使用を推奨しています。次の章では、そのカスタムメイド品の具体的な作り方や費用について解説します。

歯医者での作り方|値段・保険適用・完成までの流れ

スポーツマウスピースの型取りや調整を行う歯科診療室のユニットと設備が並ぶ明るい院内

「カスタムメイドが良いのはわかったけど、実際に歯医者でどうやって作るの?」「値段はいくらで、保険は使えるの?」ここでは、カスタムメイドのスポーツマウスピースを製作する際の具体的な疑問について、一つひとつ詳しくお答えしていきます。

私たちが提携する歯科医院は全国に広がっており、2024年のデータでは、カスタムメイドの費用は2万円弱が最も多い価格帯でした。一方で、東大阪市のように補助金制度を活用し、実質5,000円程度の負担で製作された中学生もいます。費用は医院や仕様で異なりますが、こうした公的支援の情報提供も私たちの重要な役割だと考えています。

完成までの流れと期間(カウンセリングから受け取りまで)

歯科医院でカスタムメイドマウスピースを作る場合、一般的に2〜3回の通院が必要で、完成までには合計で1週間から3週間程度かかります。

  1. 【1回目:カウンセリングと歯型採取】
    まず、歯科医師が口の中の状態(虫歯や歯周病の有無)をチェックします。そして、どのスポーツで使用するのか、どんなデザインを希望するかなどを詳しくヒアリングし、最適なマウスピースの仕様を決定します。その後、専用の材料で精密な歯型を採取します。型取りは印象材または口腔内スキャナ(IOS)に対応する歯科医院もあります(対応可否は医院により異なります)。
  2. 【製作期間:1〜2週間】
    採取した歯型は歯科技工所に送られ、専門の歯科技工士がオーダーメイドでマウスピースを製作します。この期間は医院や技工所の状況によって変動します。
  3. 【2回目:試着・調整・受け取り】
    完成したマウスピースを実際に装着し、フィット感や噛み合わせ、装着時の話しやすさなどを確認します。もし違和感があれば、その場で歯科医師が微調整を行います。問題がなければ、取り扱いや手入れ方法の説明を受けて完成となります。

値段の相場は?スポーツマウスピースに保険は適用される?

カスタムメイドマウスピースの値段は、歯科医院の方針や使用する材料、デザインの複雑さによって異なりますが、一般的な相場は15,000円から50,000円程度です。シンプルな単色のものなら比較的安価で、複雑なデザインや多層構造の高性能なものほど高価になる傾向があります。

※表示は税込。初回診療費や再調整費は別途の場合もあります

そして非常に重要な点ですが、スポーツマウスピースの製作は健康保険の適用外となり、費用は全額自己負担(自由診療)です。これは、マウスピースが怪我の「予防」を目的としており、病気の「治療」には当たらないためです。

【必見】自治体の助成金・補助金制度を活用しよう

健康保険は適用されませんが、お住まいの地域によっては、スポーツマウスピースの作製費用を一部補助してくれる制度が存在します。

例えば、大阪府東大阪市(2025年度実施例)では、市内の小中学生などを対象に、作製費用の2分の1(上限5,000円)を補助しています。また、埼玉県川口市(2024年度実施例)でも、市内在住の18歳以下を対象に費用の半額を補助する制度があります。

これらの制度は、すべての自治体で実施されているわけではありません。ご検討の際は[(お住まいの市区町村名) マウスガード 補助金 ]などで一度検索するか、地域の歯科医師会に問い合わせてみることをお勧めします。

【この章のまとめ】

カスタムメイドのスポーツマウスピースは、歯科医院で1〜3週間かけて製作され、費用は15,000円〜50,000円が相場で保険は適用外です。ただし、自治体によっては補助金制度も利用可能です。次の章では、自分の競技で守るべきルールについて確認しましょう。

競技別ルール一覧|ラグビーや野球など自分のスポーツを確認

表紙に大きく「RULE」と書かれたルールブック

スポーツマウスピースの装着は、単なる任意のおすすめに留まらず、多くの競技で公式ルールとして定められています。ルールを知らずに試合に臨むと、最悪の場合、出場が認められない可能性もあります。ここでは、主要なスポーツにおけるマウスピースの装着義務や、色に関する規定などを解説します。

2023年、ある高校ラグビー部からチーム単位でVIAの製作依頼がありました。その際、公式規定で赤色系のマウスガードが禁止されていることを知らない選手が半数以上いたのです。私たちはデザインの自由度を大切にしていますが、それ以上に選手の出場資格を守ることは大前提。この経験から、提携歯科医院には最新の競技ルールを常に共有しています。

装着が「義務」の主なスポーツ(ラグビー・アメフト等)

選手同士の激しい接触が避けられないコンタクトスポーツでは、安全確保のためにマウスピースの装着が義務化されている場合がほとんどです。日本スポーツ歯科医学会の資料によると、以下のような競技が該当します。

ラグビーの試合でボールを抱えて走る選手と追いかける相手選手たち
  • ラグビー
    13歳以上の選手に装着が義務付けられています。
  • アメリカンフットボール
    装着が義務です。さらに、審判が装着を確認しやすいよう、白や透明といった目立ちにくい色は禁止されています。
  • ボクシング、キックボクシング等の格闘技
    ほぼすべての団体で装着が義務付けられています。
  • ラクロス
    男女ともに義務化されています。
  • ホッケー(フィールド、インライン、アイス)
    年齢カテゴリーなど条件付きで義務化されている場合が多いです。

特にラグビー界では安全対策への意識が非常に高く、近年ではプロリーグ「ジャパンラグビー リーグワン」で衝撃を検知するセンサー内蔵のスマートマウスガードの導入が進むなど、科学的アプローチも取り入れられています。

装着が「推奨・許可」されている主なスポーツ(野球・バスケ等)

装着が義務化されていない競技でも、不意の接触や転倒による事故を防ぐため、装着が強く推奨されたり、ルール上許可されたりしています。

少年野球のバッターボックスでボールを打つ瞬間
  • バスケットボール
    接触プレーも多く、装着が推奨されます。ただし、規定により透明なものに限られる場合があります。
  • 野球
    デッドボールやクロスプレーなど、顔面にボールや選手が当たるリスクがあります。高校野球などでは透明または白色の使用が許可されています。
  • サッカー
    ヘディング時の競り合いや、肘が顔に入るプレーなど、危険な場面は少なくありません。
  • 柔道
    相手の頭や肘が当たる可能性があるため、透明または白色のものの使用が認められています 。

見落としがちな色やデザインの規定

マウスピースを選ぶ際、機能性だけでなくデザインも楽しみたいという方は多いでしょう。しかし、競技によっては使用できる色に制限があるため注意が必要です。

赤、青、黄色などの単色から、複数の色が混ざったマーブル模様まで、デザイン豊富なカスタムマウスガードのコレクション

代表的な例として、ボクシングでは出血と見間違える可能性がある赤色系の使用が禁止されています。また、アメリカンフットボールのように透明や白色が禁止されるケースもあります。これらのルールは、各競技団体によって改定される可能性があるため、マウスピースを製作する前には、必ず所属するチームや連盟の最新の公式ルールを確認することが重要です。

脳震盪リスクへの意識の高まりも、各競技団体のルール策定に影響を与えています。

※競技ごとの装着義務やカラー規定は団体・大会によって異なり改定もあります。製作前に所属連盟の最新版をご確認ください。

【この章のまとめ】

ラグビーやアメフトなど多くの競技でスポーツマウスピースの装着は義務化されています。また、競技ごとに色やデザインの規定が存在するため、製作前に必ず最新の公式ルールを確認しましょう。最後に、大切なマウスピースを長く使うための手入れ方法を解説します。

スポーツマウスピースの正しい手入れと交換時期

高価なカスタムメイドマウスピースも、適切な手入れをしなければ劣化が早まったり、雑菌が繁殖して不衛生になったりします。大切な歯と体を守る「ギア」として、日々のメンテナンスと適切な交換時期を理解し、常にベストな状態で使用しましょう。

以前、あるユーザーから「マウスピースが1年で緩くなった」と相談がありました。詳しく伺うと、毎日お湯で洗浄していたことが原因でした。この一件以来、私たちは2024年から製品に同封する説明書で「熱湯洗浄は絶対にNG」という点を大きく記載しています。高価なカスタム品を長く使っていただくため、正しい情報提供を徹底しています。

毎日の洗浄方法と正しい保管のポイント

マウスピースは口腔内で使用するため、使用後は唾液や細菌が付着しています。衛生的に保つために、以下の手順で毎日手入れを行いましょう。

  1. 流水で洗浄
    使用後はすぐに取り外し、指や柔らかい歯ブラシを使って、流水(常温の水)で優しく汚れを洗い流します。研磨剤入りの歯磨き粉は表面を傷つける可能性があるため、絶対に使用は避けましょう。
  2. 専用洗浄剤での洗浄
    流水下での洗浄後はマウスガード(マウスピース)専用の洗浄剤で目に見えない菌を除去しましょう。マウスガードに付着した菌は水洗浄では落とすことができず、菌が付着したままのマウスガードをそのまま着用すると虫歯や歯周病のリスクを高めるおそれがあります。
  3. しっかり乾燥
    洗浄後は清潔なタオルなどで水分を拭き取り、しっかり自然乾燥させます。湿ったままだと雑菌が繁殖する原因になります。
  4. 専用ケースで保管
    乾燥後は、通気性の良い専用ケースに入れて保管します。ホコリや衝撃から守り、変形を防ぎます。

交換時期の目安は?(大人と成長期の子供の違い)

スポーツマウスピースは消耗品です。使用頻度や競技の激しさにもよりますが、大人の場合、一般的に1年に1回の交換が推奨されています。

特に注意が必要なのが、成長期のお子様です。顎の成長や歯の生え変わりによって、歯並びは日々変化しています。そのため、少なくとも半年に一度は歯科医院で適合状態をチェックしてもらい、必要であれば作り直すことが重要です。合わなくなったマウスピースを使い続けると、保護性能が低下するだけでなく、歯並びや顎の成長に悪影響を及ぼす可能性もあります。

作り替えを検討すべき劣化のサイン

使用期間に関わらず、以下のようなサインが見られた場合は、安全のために交換を検討してください。

  • フィット感の低下
    装着時に緩く感じたり、外れやすくなったりする。
  • 破損や摩耗
    亀裂や穴が空いている、噛み合わせる面がすり減って薄くなっている。
  • 変色や臭い
    洗浄しても変色や不快な臭いが取れない。

大切なのは、定期的に歯科医師のチェックを受けることです。専門家の目で適合状態を確認してもらうことで、常に最高の保護性能を維持することができます。

【この章のまとめ】

スポーツマウスピースは、使用後に常温の水と、専用の洗浄剤で洗浄し、乾燥させてから専用ケースで保管しましょう。交換時期は大人は1年、成長期の子供は半年に一度のチェックが目安です。次はいよいよ、この記事の総まとめです。

まとめ:最適なスポーツマウスピースで、未来の安心とパフォーマンスを

このコラムでは、スポーツマウスピース(マウスガード)に関するあらゆる疑問に、専門家の視点からお答えしてきました。

スポーツを楽しむ上で最も大切なのは、安全にプレーを続けられることです。そのために、スポーツマウスピースは極めて重要な役割を果たします。特に、歯科医院で精密に製作されるカスタムメイドマウスピースは、市販品とは比較にならないフィット感と保護性能で、あなたやあなたの大切な家族の歯を深刻な外傷から守ります。

パフォーマンス向上や脳震盪予防といった効果は、現時点では科学的に確立されていませんが、最適な噛み合わせと装着していることによる心理的な安心感が、あなたのプレーをより積極的で、集中力の高いものへと導く可能性を秘めています。

費用や製作期間、競技ルールなど、導入にはいくつかのステップがありますが、一度歯を失うと二度と元には戻らないことを考えれば、それは未来の安心と最高のパフォーマンスに向けた価値ある投資と言えるでしょう。

このコラムが、あなたのスポーツライフをより安全で、より豊かなものにするための一助となれば幸いです。まずは一歩として、お近くのスポーツ歯科に詳しい専門家へ相談することから始めてみてはいかがでしょうか。

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スポーツマウスピースに関するよくある質問(FAQ)

Q1:市販のスポーツマウスピースと歯医者で作るものでは、何が一番違いますか?

A.最も大きな違いは「フィット感(適合性)」と、それに伴う「保護性能」です。歯科医院で作るカスタムメイド品は、個人の歯型に完璧にフィットするためズレにくく、衝撃を均一に分散できます。一方、市販品はフィット感が不十分で、いざという時にズレてしまい、十分な保護効果が得られない可能性があります。また、呼吸や会話のしやすさもカスタムメイド品が格段に優れています。

詳細は【徹底比較】スポーツマウスピースの種類と最適な選び方 をご覧ください。

Q2:歯医者でスポーツマウスピースを作ると、値段はいくらくらいかかりますか?保険は使えますか?

A.費用は歯科医院や仕様により異なりますが、一般的に15,000円から50,000円程度が相場です。スポーツマウスピースは怪我の予防が目的のため、病気の治療を対象とする健康保険は適用されず、全額自己負担(自由診療)となります。ただし、一部の自治体では作製費用を補助する制度があります。

詳細は「歯医者での作り方|値段・保険適用・完成までの流れ」をご覧ください。

Q3:スポーツマウスピースを着けると、本当に筋力などのパフォーマンスは上がりますか?

A.パフォーマンス向上効果については、科学的な見解が分かれており、「誰にでも明確な効果がある」とは断定できません。しかし、カスタムメイド品で噛み合わせが安定することで、一部の筋力向上や体幹の安定に繋がる可能性を示唆する研究報告は複数あります。ただし、その効果は競技の特性や個人差が大きいとされています。

詳細は「パフォーマンスは向上する?脳震盪は防げる?科学的根拠を解説」をご覧ください。

Q4:歯ぎしり防止用のナイトガードを、スポーツ中に使うことはできますか?

A.絶対に代用しないでください。ナイトガードは持続的な力に耐えるための硬い素材でできており、衝撃吸収性は考慮されていません。スポーツ中に使うと、衝撃で破損して口の中を傷つけたり、衝撃を歯や顎に直接伝えてしまったりする危険性があり、非常に有害です。

詳細は「【危険】ナイトガード(歯ぎしり用)のスポーツでの代用はNG 」をご覧ください。

Q5:子供が部活で使うのですが、どのくらいの頻度で作り直す必要がありますか?

A.成長期のお子様は、顎の成長や歯の生え変わりによって歯並びが変化するため、少なくとも半年に一度は歯科医院で適合状態をチェックしてもらうことが推奨されます。一般的には1年ごとの作り替えが目安ですが、合わなくなったものを使い続けると効果が低下するため、定期的な確認と調整が不可欠です。

詳細は 交換時期の目安は?(大人と成長期の子供の違い) をご覧ください。

Q6:ラグビーやアメフトではマウスピースが必須だと聞きましたが、本当ですか?

A.はい、本当です。日本ラグビーフットボール協会や日本アメリカンフットボール協会では、安全確保のため、特定の年齢カテゴリーや全ての選手に対してマウスガードの装着を義務付けています。他にもボクシングやラクロスなど多くのコンタクトスポーツで義務化されており、競技ごとに色などの規定も存在します。

詳細は 装着が「義務」の主なスポーツ(ラグビー・アメフト等) をご覧ください。

Q7:歯列矯正中でもスポーツマウスピースは作れますか?

A.はい、作製可能です。ただし、矯正装置(ブラケットなど)の上から装着する特殊な設計が必要になります。歯の移動も考慮する必要があるため、必ずかかりつけの矯正歯科医と、マウスピースを製作する歯科医の両方に相談してください。頻繁な調整や作り替えが必要になる場合があります。

Q8:マウスピースのカラーを選ぶ際のコツはありますか?

A.まずはご自身の競技ルールで禁止されている色がないか確認することが最も重要です(例:ボクシングの赤色系)。次に、万が一口腔外に飛び出してしまった場合に見つけやすい、グラウンドやコートの色と対照的な明るい色(例:ネオンカラー)を選ぶと紛失防止になります。もちろん、チームカラーや個人の好みに合わせるのもモチベーションに繋がる良い選び方です。

※ 本稿の規定・費用・助成は 2025年8月23日 時点。最新は公式情報をご確認ください。

執筆・監修・COI(利益相反)

執筆者

VIA開発チーム(株式会社成田デンタル)
「スポーツを、もっと安心に」をミッションに、歯科技工士、歯科医師が集結した専門家チーム。50年以上にわたり歯科医療の現場で培ってきた精密な歯科技工技術と、トップアスリートの協力のもと収集した実証データを基に、パフォーマンスを最大化する「究極のギア」としてのマウスガード"VIA"を開発。科学的根拠と職人技の融合で、アスリートの挑戦を口元から支える。

監修者

野見山 和貴 先生
IVY大分医療総合専門学校 学校長 / 日本スポーツ歯科医学会 認定マウスガードテクニカルインストラクター
スポーツ歯科医療の第一人者として、多くのアスリートの口腔ケアとパフォーマンス向上に貢献。本稿で紹介しているスポーツマウスガード「VIA」の監修も務める。

【インタビュー】スポーツ歯科の最前線から語る、VIAの真価 - 野見山和貴先生に訊く -

COI(利益相反)について

この記事は、オーダーメイド・スポーツマウスガード「VIA」を開発・提供する株式会社成田デンタルによって制作されました。記事の内容は、公的機関や学術論文など、独立した第三者の情報源に基づいていますが、執筆者は自社製品の開発・販売に関与しています。私たちは、アスリートの安全と健康を最優先に考え、科学的根拠に基づいた正確で公平な情報提供に努めることを編集方針としています。

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